世の中には知らないこともあるものだ。
小学生の時、あれは、S山君の自宅に泊まりに行かせてもらった時のことだった。
カレーを食べさせてもらった。
S山君宅では、カレーに生卵を入れて食べていたのだ。
生卵?!
私の家庭でもカレーは頻繁に食べていたが、生卵を入れるという食文化は無かったので、かなりのカルチャーショックであった。
とても進んでいるというか、シャレたことをするんだな、自分は何も知らない…と思った記憶がある。
そして、同じく小学生時代。
同級生の誰かが、鮭のこと「シャケ」と呼んでいたこと。
シャケ?
「シャ」ケ?
しゃけ…シャケ…
私は一度も聞いたことがなかった。
なんだその、こなれた呼び方は?
甘ったれてそうな、ちょっと生意気な、それでいて少し分かってるその感じ。
しかも旨そうに聞こえる。
これも食文化におけるカルチャーショックであった。
ちなみに、私は今でも「サケ」である。
ただ単に「シャケ」という響きが気持ち悪くて、そんな風に呼べない。
※シャケ文化圏の方々、ごめんなさい(>_<)
私は小学生の頃、体も細く、食が細い方だった。
うちの家族が、カレー生卵のS山君の家族と外食に行った時のこと。
子どもの私たちはチャンポンを食べた。
同級生のS山君は、どちらかと言うと体も大きい方で、チャンポンを早く食べ終えた。
S山君の食べっぷりを、S山君の母親が少し自慢気に伝えてくるのだ。
それ以来、今でもスーパーでチャンポンの商品を見るたびに、何十年も前の、その時の悔しさを思い出す。
そして、食も太くなった現在、まれにチャンポンを自宅で作って食べる時は、しっかりガッツいて、いまだにその時の悔しさを乗り越えようとしている自分がいる。
カレーに生卵、シャケ、チャンポン。
私は、こういう小さな劣等感を勝手に積み重ねて、自信や自己肯定感を無くしてきていたのであった。
【小学生の自分へ】
生卵をカレーに入れなくてもいい。
入れたところでスゴくもなんともない。
お前にとって鮭は「サケ」だ。
「シャケ」と呼んだところで偉くもなんともない。
チャンポンを早く食えたからって何になる?
お前のペースで食って消化すればいい。
不適王