幼少期より冴えないことばかりの私 不適王。
小学校の高学年に突入していき、しばらく経ってからの頃、どういう経緯があったのか、校内で仮装大会が開催されることになった。
控えめで目立たず、文武に劣り、泣き虫で脚光を浴びることが無かった不適王は、おそらく日頃の鬱憤を晴らそうと、ここぞとばかりにスイッチが入ったのだろう。
その仮装大会の仮装メンバーの1人となった。
そして、なぜかオズの魔法使いのドロシーの枠があって、魔法がかかってしまった。
女子たちが持ちよった三つ編みのカツラ(何でそんなものを持ってるのだろう?) やスカート、靴を、不適王は全く恥じらいもなく着こんだ。
貸し出した女子から「汚さないでよ」とかなんとか言われながら。
顔にお化粧もしてもらったさ。
それだけではなかった。
自らのアレンジで、同級生の前で女の子らしいポーズを取ってやった。
皆の爆笑と注目をかっさらった。
噂を聞きつけた隣りのクラスからも大勢見に来たもんだ。
他を圧倒して主役に躍り出てしまった。
小学校高学年のダメ児童 不適王の中の何かが、弾けた瞬間だった。
私はヒーローに、いや、ヒロインになったのだ。
同級生は、ドロシーになっておどけてみせる満面笑顔の私のことをどう思ったのだろう?
頭がおかしくなってしまったのか? とでも思ったのだろうか?
それとも これが不適王の本性だと思ったのだろうか?
さぞかし人間の隠された一面に驚かされたことであろう。
小学生時代、数少ないが輝いた瞬間の1ページであった。
『歩いてく』
不適王