日頃、私が受診している某診療科のベテランの男性医師は、基本的には柔らかい物腰で対応をする人だが、ある部分では勉強不足であり、また頑固な一面をのぞかせてイヤな思いをさせられることもある。
これは医者アルアルのようで、医師も人間であり、未熟な部分もあるということなのだろう。
もちろん、その医師のおかげで恩恵を受けることもあるし、医師をコロコロ変えると面倒くさいので、今のところ、これからもこのまま継続して関わってもらうつもりだ。
どこへ行っても何かあることだろう。
さて、この医者と関わってもう10年ほどになる。
その中で、もう1つだけ、気になる場面があった。
しばらく前のこと。
診察室に入って椅子に腰を掛けると、開口一番、医者が私に苦笑いをしながら言うのだ。
「さっきの女の子が大変で」
………
私と入れ違いだったその若い女性の患者さんと、どのようなやり取りがあったのか分からない。
その医者からすれば、技術的に対応に困るか、展望が開けない患者さんだったのかもしれない。
あるいは、もしかしたら患者さん側に不遜な態度があったのかもしれない。
それでも、私は医者のこの発言を聞いたとき、不信感が湧いた。
曲がりなりにも何かに困って受診をしている患者さんだ。
そして、プライバシーの問題がある。
万が一この患者さんと私が顔見知りだったら、場合によってはかなり問題になるケースだと思う。
仮に、私がその患者さんと顔見知りであったとしても、ややこしくなるので私は医師の発言を秘匿しておくが。
そして何よりも、もしかしたら私のことを医者の口から他の患者さんに言われる可能性だってあるということだ。
感情労働の医者も大変だろうなぁ、といつも思いを馳せている。
大勢の患者さんを診なければいけない。
それでも、物言えば唇寒し秋の風。
医者には守秘義務もある。
あれは医者の不注意な発言だった。
不適王